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「年末年始こそ腰を落ちつけて大長編を!」。そう意気込んだはいいけれど、休み明けまでに読み切れず、ストレスを抱えたまま出社…なんて事態はできれば避けたい。そこで、2011年に刊行された文芸作品の中から、手ごろな長さ(原稿用紙300枚程度)で、小説を読む楽しさを存分に教えてくれた3冊を独断で選んだ。
(1)山田詠美著「ジェントルマン」(講談社・1470円)
〈ぼくの愛したその男、罪人につき。〉というオビの文句(著者の考案)でも分かるように、哀切極まるピカレスク小説だ。
眉目(びもく)秀麗、文武両道。主人公の坂井漱太郎(そうたろう)は、分け隔てない優しさで同性異性を問わず周囲をとりこにする青年。だがジェントルマンとしての仮面の裏には、残酷な犯罪者としての顔が隠されていて…。物語は漱太郎の残酷な犯罪を唯一知る同級生、夢生(ゆめお)との関係を軸に展開する。なんらの罪の意識もない漱太郎と、背徳に魅せられる夢生。現代版「罪と罰」に、何組ものかなわぬ恋愛が交錯し、重層的な物語が立ち上がっている。
ラストの光景は恐ろしく悲しいけれど、美しい。内容は全く違うが、村上龍の長編「愛と幻想とファシズム」の読後感に似ていると思った。
これだけ起伏があって濃密な内容を原稿用紙300枚に収める技量にも驚かされる。文章は的確で無駄がなく、人間心理の核心をずばっと突いてくる。だから読者は常に緊張を強いられる。ところどころにちりばめられたアフォリズムに勇気づけられる読者も少なくないだろう。
(2)絲山秋子著「不愉快な本の続編」(新潮社・1260円)
短編集「ニート」(角川文庫)に収められた「愛なんかいらねー」に出てくるヒモ男「乾」の後日譚。居候させてもらった女性と別れた乾が、常によそ者として、新潟や富山、広島をさまよう様子が乾いた文章でつづられ、痛切な悲しみが漂っている。
語り手の「乾」はとんでもない嘘つき男なのに、なぜか信用できそうな気がする不思議な人物。男性のモノローグは絲山作品では珍しくないが、この作品の1人称は「おれ」でも「僕」でもなくて“ボク”。著者によれば、物語をほぼ書き終えてから、この人称を採用しようと決めたという。それが相手との距離を測りかねる乾の気持ちをうまく表現している。
(3)丸谷才一著「持ち重りする薔薇の花」(新潮社・1470円)
欧米で伝説になった日本人の弦楽四重奏団「ブルー・フジ・クヮルテット」の醜聞を描く物語。不倫あり才能への嫉妬あり裏切りありと、ステージでの華麗な演奏と対照的な4人の普段のゴタゴタが、老経済人の回想で再現されている。
第1、第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロ。同じカルテットとはいえ、メンバーは演奏する楽器によって性格もかなり異なるらしい。そんなキャラクター造形の妙も読みどころだが、うわさ話の口調をはじめとしてさまざまな場面での人物の声が再現され、作中に響き渡っているのが何より魅力的だ。ロシアの思想家、ミハイル・バフチン(1895~1975年)がドストエフスキーの長編を称して言ったように、この小説にも、複数の声や意識が融合しないまま組み合わさっている面白さがあるといっていいかもしれない。(海老沢類)
(この記事はエンタメ総合(産経新聞)から引用させて頂きました)
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